クリエイター

ディレクターをしている時のハナシ。
ディレクターの仕事の時は、クライアントがリサーチしたデータを元に大まかなシナリオを渡され、それをオレが漫画として起こす為に文章に肉づけをしながら、セリフを分けたりコマ割りをしたりして、漫画家さんが漫画として描ける状態にしている（この際に正確なページ数や漫画家に支払う予算、どの漫画家さんに依頼するか等が決まる）。

そんなある時クライアントからネタの要望は、『母娘』が『車の中』で『富士山』を見つけて『喜ぶ』というコマから『スタート（最初の1コマ目）』する条件だった。

頭の中で構成を練りながらセリフごと、コマごとにパートで分けて再びチェックしてもらう為にクライアントに戻すのだが、コマごとに分けた配分のスタートが2コマになってしまい、クライアントからは「何とか1コマにして欲しい」と注文がきた（汗）。

実際にお見せする事はできないので想像力を働かせてイメージして欲しいのだが、『富士山』を見つけるという事は、『母娘』は富士山に対して『背を向ける』アングルになってしまい、『喜ぶ』という表情までは表現する事はできない。

『やや斜め』などのアングルで入れれば表情までは何とか描けるが、『車の中』という狭い決められた条件で、『母娘』2人の表情まで描く事は難しく、また、『スタート』の1コマ目なので『母娘』のキャラを知ってもらう為にも、『母娘』の表情はヘンな角度ではなく正面から出したい。

なので『喜ぶ母娘』と『富士山』でどちらも『正面』から描く必要があり、最低でも2コマになってしまうし、それを考えた上で構成を組んだオレにしてみると「（なかなか難しい事を言うなぁ…）」な訳である（苦笑）。

少ない脳味噌を使ってオレが考え、OKを貰ったアングルを伝えるので、想像力を膨らませてイメージして欲しい（笑）。

『車の中』から【ドア越し】に『母娘』が『喜んで』コチラを見ており、【車のウィンドウ】に『富士山』が【映り込んで】いる状態にする事で、1コマに全てを詰め込んだのだ。

これにはクライアントも喜んで納得してくれたのだが、問題はコレを実際に絵に描く漫画家さんに「どう伝えるか？」で、伝言ゲームじゃないけれど、ちゃんとコッチの意図が伝わるのだろうか…今回は最初からオレがラフで描いて渡した方がイメージし易いのでは…なんて思っていたのだが、なんと漫画家さんは一発で合わせてきた（笑）。

なかなかの無理難題なので、漫画家さんからも「これ2コマに分けたらダメですか？」なんて聞かれるかと思ったのだが、流石だね（笑）。オレも思わずニヤリとしてしまった（笑）。

ちょうど担当をお願いした漫画家さんは、抱えている漫画家さんの中でも一番報酬が高い漫画家さんで、高額な理由は絵が上手なだけではなく丁寧。それでいてセンスがある事が理由なのだが、キャラクターの服装や髪型のセンスなどばかりに注目してきたが、やはり総合的にセンスが高い事を実感した（笑）。

これが本当に辿り着けない漫画家さんも普通にいる訳で、間に入って見てみると非常に面白いし、オレ自身もまた勉強になるのである（笑）。