昨日説明した、文字や画像を扱えるソフトが覇権を握った事で、業界のバランスが大きく変わった。
だが、知名度こそあるものの、インターネット上では他のソフト(アプリ)も充実しているし、絶対的知名度で入る余地もなかった大手メーカーを、新参者のメーカーが支持を集めるまで浸透させる事ができた理由は【無料】でユーザーを囲い、利用者を増やしていった戦略である。

実際に毎日更新しているこのブログも、文字や写真を扱いながら、他のソフトを使っているし、本来ならば入る余地のなかった大御所メーカーに負けないぐらい、今ではインターネット上で仕事を探しても「◯◯(このソフト)は使えますか?」と条件が出されるほど、主流になっている。

Web会議やクライアントと連絡を取り合うアプリも同じで、数人までの登録は無料・数十分までは無料、それを超えると有料といった仕組みで売り出し、みんなが利用してしまえば後から大手が参入しても、『今さら変えなくても、今のままで充分』という心理がユーザーに浸透して、形勢逆転させる事は難しくなる。アリがゾウを倒すぐらい、見事な戦略だと感心してしまう。

最近のニュースではAIが漫画やイラストを描ける様になり、過去の膨大なデータの中から好みの絵を一瞬で描き上げる事も、そう遠くない未来で実現されると思う。これをフリーとして無料で出すメーカーが現れれば、あっという間に広まって、誰でも簡単に上手な絵が描ける様になる。今、絵で食べている人は死活問題なぐらいの致命傷になるかも知れない。

オレは漫画も描くしシナリオも書くので、YouTubeなんかでディレクターとして活動していると、ライターさんが書いてきたシナリオをチェックして、漫画家さんが描いてきたラフや色入れのチェックをする。シナリオならば誤字・脱字なんか普通にあるし、オチも何もないシナリオも多い。漫画ならば身体のバランスがおかしかったり、セリフを言ってる訳でもないキャラクターが、口を開いて描かれている為に紛らわしかったりといった部分を指摘し、修正してもらっている。

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一方でビヨンドと呼ばれるバーチャルなイラストを作るソフトもあるのだが、これが参入してきた事で漫画家の仕事がイッキに減った。ソフトの値段が16万だかと高額なのだが、長い目で見れば漫画家に支払うコストよりも安く作れる事が理由で、だが、これもAIが出回って誰でも絵が描ける様になれば、業界がひっくり返って誰も使わなくなるだろうし、いずれはアニメも危なくなるとオレは予想している。

昔の漫画は『・』の集合体で、キャラクターの【影】などを作る『スクリーントーン』と呼ばれるシールを貼っていたのだが、これもソフトの発達で不要になった。1枚¥300〜高いものでは¥1,000以上したはずで、しかも使い捨てで一度貼ったら使えないので、メーカー側にとっては美味しい商売だったはずなのに、今やゼロというのも生々しいし、時代の進歩でどんどん淘汰され、無くなっていく物に【絵】が含まれてもおかしくないのである。

さすがにゼロになるほど完全に絵を扱う仕事が消滅するとは思えないが、【情報】を扱って収入を得る道すじにおいて、もはや絵だけで進む事は難しい。心得がない者でも描けてしまう新規参入者がどんどん増えれば、淘汰される側に追い込まれるのもまた必然なのだ。

だが、ピンチはチャンスでもあり、漫画なら複雑で時間のかかる背景など、AIが一発で描いてくれる時がくるだろうと思っているし、だからオレは感覚を失わない程度にとどめて、シナリオの仕事を優先してきた。

変化に対する戦略で、ピンチをどうチャンスに変えるか? 明日はこの辺りに触れたいと思う(笑)。

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