女性の読者には申し訳ないのだが、今回はヤンキー漫画の話(笑)
時代背景的にも結構な数の作品を読んだ方だが、漫画家としての目線も含めて『良い作品』『ダメな作品』について触れたいと思う(ダメな作品の名前は出しませんが、読んでいる人は「なるほど…」と思うかも:笑)

有名な【ビーバップ・ハイスクール】はやっぱり面白いと思うし、必要最低限のキャラクターで読み易く、非常に良く作られた作品だと思う。単純な喧嘩漫画で終わらずに小ネタのギャグなんかも秀逸で面白いのだが、漫画家目線で凄いと感心するのはシンプルさで、キャラクター以外の『背景』なんかも実にシンプルでありながら手抜きを感じさせない。普通、背景はアシスタントという別の人間が描く事が一般的なのだが、あの作品に関しては作者本人が全部描いてるんじゃないかと思うぐらいシンプルなのも面白い(『タガネ安』だけ最後まで登場しなかったのが残念だが:笑)

もう1つは【湘南爆走族】で、5人の暴走族である高校生の物語だが、普通の喧嘩だけではなく、夏休みに友達の家に遊びに行ったり、授業をサボッて5人でツーリングに行き、学校で食べるはずだったお弁当を食べたりするといった、『仲間同士で遊ぶ』という部分なんかにも好感が持てる。この2作はハッタリではない、作者自身がそうであったであろうと感じる作品(笑)

この2作品に共通するのはリアリティで、共感できる『あるある』だからこそ面白いし、まだ自分が知らない事に対しても説得力がある訳だが、このリアリティが欠けていると「(そんなワケないだろ)」というツッコミが先に来てしまい、何を見させられても薄っぺらく感じてしまう(汗)
たしかTVアニメにもなったぐらい有名なヤンキー漫画でも、プロレス技のローリングソバットが決めワザだったりすると「はぁ?」と思ってしまうし、格好もヤンキーらしくない中途半端さでダサく「(……なんで皆そろって革靴履いてるの?)」なんて思ってしまう(笑)
比較的新しい有名なヤンキー漫画でも、高校生(17〜18歳)の設定のはずなのに全身刺青だらけだし、かと思えば暴走族なのにバイクはどノーマルでウィンカーすら超デカイし、「(いやいやいやいや……)」、「(そんなワケないだろ!)」で、「(身体にタトゥーを彫る前に、まずはバイクをイジろうよ。どノーマルのバイクにノーヘルで悪ぶって乗ったって、マフラーも超・静かじゃん!)」なのだ(笑)
この作品は登場キャラクター殆どの顔に、やたらデカイ傷があるのも特徴で、「(どんだけ大ケガなんだよ……)」を通り越して、「(画力が無いから傷を入れないとキャラクターを描き分けられないんだな……)」という事まで見透かしてしまう

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少年マンガであるあるなのは、苦労したはずの強敵が別の強敵が現れると明らかに最初より弱くなっている事で、『北斗の拳の法則』とも言われている(笑)
まぁ、話を盛り上げる以上ついて回る問題なのかも知れないが、豊富なキャラクターを登場させつつ、これを最後まで崩す事なくまとめた【特攻の拓】も見事だと思っている。これは前の2作品と違って脚本家と漫画家で分かれている作品の為、途中話が飛んでいる箇所なんかもあるのだが(気づいている人がいたとすればなかなかスルドイ:笑)、嫌なヤツは嫌なヤツのままだし(これも結構ブレブレの作品が多い:汗)、個々の『強さのバランス』も崩さない。また、登場するバイクも詳しく細かく描かれ、ウィンカーなんかはもちろん、マフラーからハンドルやカウルまでちゃんと『改造車』として描かれているのだ
描く側から言うと、自分が描く為には資料も必要になる訳だが、改造前のノーマルの状態の資料はいくらでも見つかるとして、それぞれの車種の改造車、しかもそれが色んな角度・アングルで、吹っ飛んで引っくり返ったバイクの『腹側』までとなると、難しい以前に解らない
おそらく絵のタッチからしてアシスタントが描いている様に感じるのだが、それにしてもと思うぐらい、相当細かく難しい構図の連発だし、普通のアシスタントではまず描けない(解らない・知らない)と思う
まぁ、漫画に登場するハーレーのピストンをヤマハのシリンダーに組む事はさすがに無理があるとは思うが、そういった意味でも良くできた作品なのである

ヤンキー漫画に共通する事は、『偏り』が生じやすい事で出てくる制限で、登場キャラクターは『黒の学ラン』か夏服の『白い開襟シャツ』、髪型はどれも『黒髪のリーゼント』か『金髪』もしくは『パンチパーマ』。物語の展開も喧嘩がメイン
これを『飽きさせない』、リアリティのあるシナリオやシュールなギャグ、王道の喧嘩シーンでの緩急や抑揚をつけた『臨場感』が重要で、良い作品はその辺りの穴埋めというかフォローも巧い

そこもやっぱり『センス』なのである

*メールの紹介*

『肩揉みマサ(ワカメうどん)さん』からメールを頂きました。ありがとうございます。


お勧め漫画の紹介有難う御座います!
漫画家としてだけでは無く脚本家としての目線でも見てるんですね。
正直、脚本家の仕事がどのようなものでどの位大変なのか想像つきませんが…(笑)
風の谷のナウシカは漫画では読んだ事がないので是非読んでみようと思います!

ありがとうございます。脚本の仕事は強いていうなら漫画の半分は『脚本』で、残りの半分が『絵』です。『サザエさん』はもともと新聞の4コマ漫画なので、あれをTVの30分アニメにまで足しているのは『脚本』の要素が大きいですね
また、4コマ漫画なので漫画であって漫画でないというか、『絵』で魅せるのではない、ドキドキやハラハラも無いので、『ドラえもん』は映画になっても『サザエさん』は映画にならない
『サザエさん』はお父さんが読む新聞に載っている4コマ漫画が、日曜日の夕飯時に放送されているから子供たちも一緒に観ていた(知っていた)知名度であって、子供たちが楽しみにしていたアニメ(漫画)ではないし、そもそものターゲットが子供ではないのです

『風の谷のナウシカ』は映画の内容は原作の半分以下、原作が『10』とするなら映画は『2』か『3』程度の内容しか描かれていません(これは両方見た人なら、全員がそう言うはず)
映画用に凝縮されているのはもちろんなのですが、映画の段階で原作の連載自体が終わっておらず、半分以上が映画の後に描かれているのでストーリーも全然違います(深く、面白い方の意味で)
偶然でしょうが、今のコロナを予言していた様な世界観も含まれているので、とにかくスゴイ作品です

是非一度読んでみて下さい
ありがとうございました

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