『THE WILDMAN』の連載以外にYouTubeの漫画の仕事をしているのだが、自分で全てを考える『THE WILDMAN』と違い、脚本家さんが書いた原稿に対して、オレが漫画として表現するスタイルはなかなか難しい

1回1回全て読み切りで毎回ストーリーが変わり、テーマも変わるので、主人公も若い男だったり、美人の女子大生だったり、無職のオッさんだったりと色々である

送られてくる原稿は当然文字だけだし、『1コマ目 「オレは◯◯、◯◯歳。しがない◯◯をやっている』みたいな紹介から入るのが一般的なのだが、そこで初めて「(あぁ、今回は男か)」になって、中肉中背などの身体的特徴から、メガネをかけさせたり、短髪にしたりといったキャラクター設定を決め、そこに関係してくるその他の登場人物のキャラクターなんかを決める

例えば、前半に『仕事は早朝から昼まで』なんてセリフが入って、中盤に『一杯呑みに行きませんか?』『おっ、いいねぇ』なんてセリフが入ると、「(昼間っから呑みに行くって事? 明るい背景の中で呑み屋に入る描写でいいの?)」となるし、1コマ目にいつものように「オレは◯◯、◯◯歳。」なんてセリフがあったって、その作品では一度も名前を呼ばれるシーンがなかったりなんかすると、主人公の名前なんか不要な情報でしかないし、ハッキリいってカットしたいぐらいである

『脚本家』が相手ならオレは『作家』、仕事の依頼主が『監督』のポジションになるので、「毎回余計な指示が入って困っているので、原稿以外の描写の指示に関しては無視させてもらいます」と了解を得ているのだが、この監督・脚本・作家の関係が非常に難しい

例えば、監督である依頼主が脚本家を募集するのに、募集条件は『テーマは◯◯で文字数1600文字以上』とかで設定する。金額は同じなので文字が少なくて適当な原稿を寄越されても困るという理由からだろうが、オレは脚本家が上げてきた原稿を『これを20コマ以上で漫画にして下さい』として渡される形になり、脚本家としては条件をクリアする為に文字数の壁がある訳で、言い回しを変えてわざと長ったらしい文章なんかにして文字数をクリアしている原稿も多い。それを漫画に表現しようとすると、内容によっては後半は文字ばかりになって漫画というより小説のようになってしまうなんて物もある

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なので依頼主に対して「コッチで原稿を変えますよ」と事前に許可をもらい、脚本家の原稿をベースにこっちが全部手直しした原稿を「これで進めます」と送り直し、それを漫画で描いていく流れになっているのだ

最初から自分で考えて書いている『THE WILDMAN』では気がつかなかった事だが、この脚本と作家の間に入る『編集・構成』というポジションが、実は非常に重要で、いかに違和感なく物語を進行させるかにかかっている

描き上げた漫画を納品する前にヨメさんに見せてチェックしてもらっているが、手直しする前の原稿と比べさせると「なるほどね〜、気がつかなかった!」と変更されている箇所に感心される。この『気づかなかった』が重要で、いかに違和感なく物語を進めるかが肝心だし、見る側が「ん?」と違和感を感じて途中で止まってしまう(=覚める)箇所ができてしまってはマズイのだ

なのに脚本家さんによっては描写の指示まで細かく書いてくる人がいて、『対象物を持った2人の笑顔のアップ』なんて書いてくるのだが、頭でイメージしてもらえばわかるように横アングルででも描かない限り、どちらかは『背』になるわけだし、横アングルで収めるのならかなり引いて描かなければ2人は収まらず、笑顔のアップは不可能になる(実はTVのCMなんかも同じで、カレーやシチューを食べて『2人の笑顔』のシーンなんて、個人個人を別々にでも撮らない限りは不可能。なので、2人でテーブルに座っているのにカウンターのように横並びに座って、違和感満載で食べてたりしているので気がついたら観てみてね:笑)

意外と重要なのが『時系列』で、文章の原稿だけを追っていくとシーンが変わるが、これは数時間後の『同じ日』での出来事なのか、翌日か数週間後という『別の日』での出来事なのかがハッキリしない

『同じ日』ならば登場人物の服装・髪型は同じ必要があるし、『別の日』なら解りやすいぐらいに変え(女性は髪の毛を結んだり)、文章としても『翌日ーー』や『数週間後ーー』の一文の補助を入れた方がわかりやすい

ここまで解って書いてくれる脚本家さんとは未だに会っていないし、「(そもそも描写の指示まで必要か?)」「( そんなにコダワルなら自分で描けよ)」とも思うわけで、やりずらさを感じながらやはり漫画の難しさを勉強するのであった

(*長くなっちゃったのでつづく)

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