馴染みの居酒屋さんのマスターから「この前、ラーメン屋さんから余った野菜を頂きました♡」なんて言葉も聞かれるようになり、向いのラーメン屋さんとの関係は確実に良くなっていた

しかし、自粛ムードから緊急事態宣言が出て、いよいよ本格的にお客さんは少なくなってきていたし、居酒屋さんも新たな対策でテイクアウトとして弁当の持ち帰りなんかを始めていた為、客の取り合いとまでは大ゲサだが、協力し合うよりも自分たちのお店を何とか守らないと潰れかねないような状況になってしまったらしい(汗)

オレたちはラーメン屋さんともすっかり仲良くなって、空いている時にはオレ達が食べ終わって店の外に出る頃に店主が先に外へ出て待っていてくれて、世間話をして帰るまでになっていたし「お客さんがだいぶ減ってきた」と相談されれば「それでもまだ恵まれてる方だよ。他のお店なんかもっとガラガラでよっぽど厳しそうなんだよ」なんて元気づけたりしていた

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ある日、居酒屋で呑んでいて、ヨメさんを店に残して外でタバコを吸っていると、ラーメン屋さんの混み具合を覗きにきた若い男がいた

分煙化が義務づけられてから居酒屋さんでもタバコは外で吸わなければならなくなったのだが、狭い向かいのラーメン屋さんは禁煙なので、食べ終えた客なんかが居酒屋さんの喫煙所を使ったりもしていて、ラーメン屋さんが混んでいるからタバコだけ吸って帰ろうとしている若い男に「ココの居酒屋さんも安くて美味しいッスよ」と声をかけると、「ホントですか?」となり、1人で呑んで帰ると言い出した

マスターに「お客さんです♡」と紹介し、オレとヨメさんで話し相手になって色々聞き出してみると、石川県から上京してきたヨシダくんは27歳で、かなりの酒好きだが彼女が下戸で呑めないのであまり外では呑まないらしい

外で呑まないもう一つの理由が『1人でお店に行ってもつまらないから』と言うのだが、オレたちが話し相手になって料理も美味しいこのお店をメチャクチャ気に入ったらしく上機嫌だった

オレとしては世話になっている居酒屋さんを少しでも気に入ってくれて、オレたちが居ない時でも足を運んでくれるようになればという思いで、オレが必ず注文しているガツ刺しをオレたちの勘定でご馳走してやると、味にもオレにも大喜びしてオレの事を『兄さん』と呼びはじめた(汗)

思わぬ出会いのヨシダくんに、この先振り回される事になるのだった……

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