オレたちの隣りである『ワイルドストロベリー』の隣りに出店した名古屋から来たシンさんは、『夢屋』という自転車屋さんで、名古屋で独りで経営しているお店を閉めて、トラックで参加してきていた

トラック1台に売りモノの自転車を積み、出店している間は自分のテントをトラックの荷台に張って寝泊まりするというスタイルにも驚いたのだが、バイクで参加するミーティングで自転車を売るというスタイルにも驚いた(汗)

出店前日の初めて挨拶をした時にその話を聞いて「自転車なんか売れるの? バイクで参加した人は持って帰れないじゃん(汗)」と言うと「そうなんです…でも去年は2台売れたんです」と言う(汗)

「2台……(汗)」今回は何台持って来たの?と聞くと、8台だという。オレたちは1ブース分である7m×7mも必要ないので『ワイルドストロベリー』の佐々木さんと出店料を半分ずつ折半して出店しているのだが、シンさんは独りで1ブースまるまる借りているし、そこで自転車を売ろうと言うのだから、なかなかのハードルの高さである(汗)

「……大丈夫なの?(汗)」と聞くと「そうなんです…友だちみんなにも『売れるわけねぇ』と反対されたし、止められました(汗)」と言い、「でもバイブズミーティングに来たかったから、ヨメさんには『バイブズミーティングは出店料が安いから』ってウソついて来たんです」と言う(汗)

そんな不安要素しかないシンさんのお店の最初のお客さんは、50歳近い男性と70歳だというお母さんの親子で、息子さんの男性がローチャリを気に入ったらしい。バイクで参加しているのではなく、車で来て他の物販エリアで出店しているという

たまたまオレも居合わせたのでシンさんのためにも「是非お薦めッスよ」と薦めると、車には出店する荷物をギュウギュウに積んできたので、商品が売れない限りは自転車を買っても持って帰れないという

シンさんと「ペダルを外し、ハンドルを固定しないで動く程度に緩めればかなりコンパクトにはできる」と説明し、帰る日までに商品が売れる事を祈り、最悪は商品を宅急便で送り、自転車を積むスペースを確保すればいいのでは?と提案すると「なるほど!」となり、買ってくれる事が決まった

するとお母さんの方が「それなら私もアッチの1台が欲しい」と別のローチャリにも食いつき、ナント2台が売れる可能性が出てきた

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ココは押せ押せムード全開である。シンさんに「(よっしゃ!)」と言わんばかりにアイコンタクトを送るのだが、シンさんは「…アレはお勧めできないんです」と言う

「(え?…なんで?)」

「(ローチャリは『コースターブレーキ』といって、ペダルを反対に回すとブレーキがかかるんですけど、アレは普通のママチャリと同じブレーキなんですよ…)」

「(はぁ? あのね…ソコそんなに重要か? 70歳のお母さんが乗るんだぞ? ママチャリと同じなら逆に乗り易くていいぐらいだろ?:汗)」

「(そうなんですけど…邪道なんだよなぁ……)」

「(あのなぁ…ソコまでこだわるお客さんもいるし、こだわらないお客さんもいるだろ? せっかく気に入ってくれたんだし、ココは売っちゃうべきだろ? なんの為にその自転車を積んできたんだよ? 売るためだろ?)」

「(まぁ、そうなんですけど…:汗)」

オレからお母さんに構造の説明をすると案の定全然構わないと言うし、乗り易い方が良いと言う。結局納得してもらい、ローチャリ2台をお買い上げ頂いた

買ってくれた親子は1台ずつ自分たちのお店まで運ぶので、もう1台は後でまた取りに来ると言う

「シンさん、一緒についていってもう1台は届けてやれよ!」

「え?」

「あのなぁ…自転車2台も買ってくれたんだぞ? もう1台取りに戻って来るぐらいならそれぐらいサービスしてやらなきゃダメだろう?」

「でも店が……」

「オレが店番やって、その間にお客さんが来たらうまく話して引き止めとくから、行って来いって!」

こうしてシンさんはもう1台の自転車をお客さんのお店まで送り届け「シゲさん、ありがとうございます♡ 売れました♡」とホクホクして戻って来た(汗)

このやり取りを見ればもうなんとなく解ってもらえるかも知れないが、シンさんは典型的な職人タイプで、『接客』が大の苦手なのだ(汗)

シンさん自身が「シゲさんスゴイっすね、俺、クチが全然ダメなんですよ…」なんて自分で言うのだから間違いないのだろうし、普段は自分のテントの裏の、トラックの影に椅子を出して座り、お客からは見えないように隠れている(汗)

日中は結構な陽射しの強さで、直射日光を浴び続けて汗をかいているぐらいなので、日陰のテントに居ればいいのに…そもそも何故独りで出店しに来たのだ(汗)

理解不能ばかりなシンさんなのだが、今回この男が台風の目となってミラクルを起こすのであった(笑)

(つづく)

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