昔、オレのサドルバッグや財布をオーダーで造ってくれている、ベーシックトラックスのモッチーに『トラブルがあるからこそ、思い出に残るんだよ』と言われた時、その通りだなと思った

彼もまたオレと同じショベルに長く乗り続けている1人だが、20代の若い頃には東京から山口県まで自走した強者でもある

今回の小説を読んだ方には「ネタだらけじゃん」と突っ込まれそうなくらい見事にトラブルが続いたが、オレ本人は純粋に旅を楽しみたかっただけで当然そんなトラブルを望んでいたわけもないのだが、人間は初めて体験する事は2〜3割増しでより記憶に残り易いのかも知れない

結構前の出来事でも今回こうして文章に起こせたのは、トラブルが多かったからとも言える

昨日のブログで今はヨメさんと二人でずっと旅を続けている話をしたが、すっかり知り合いが増えた高知以外は、今でも泊まる場所はその時に探す『行き当たりばったり形式』のままである

休憩に寄った道の駅やサービスエリアで宿を探して確保し、ヨメさんにナビをしてもらい、到着したホテルのフロントで美味しいお店を教えてもらったりして開拓する『旅』は、ひとりじゃなくても楽しい

途中であまりの暑さにペットボトルに水を入れて着ているアロハを濡らしながら走ったり、そうかと思えばカッパを出すタイミングを逃してゲリラ豪雨に遭って二人でビショ濡れになったり、着替えが途中で足りなくなって到着したホテル近くのコインランドリーで缶ビールを持ち込んで呑みながら乾かしたりと、計算どおりに行かない事が楽しくもある

オレはむしろ慎重派で『同じ失敗は繰り返さぬ』勢いで周到に準備をするが、またそのウラをかくようなトラブルが起きている気すらするし、その追いかけっこが結果楽しかった思い出として記憶に残り易かったりしている

 

近年注目されているVRは、スキーのゴーグルのように装着して、自宅に居ながらより立体的な映像を楽しめるらしい

オレは使った事はないのだが、便利な世の中になったものだと思うし、そのうち自宅でダウンロードした映像を選んで「よし、今日はアメリカを走ろう」なんて事ができる時代だって来るのかも知れない

それこそ遊園地のアトラクションのように実際の気分が味わえるような風を正面から受けたり、走っているような振動を味わったりだって夢じゃなさそうな所まできている

それでもやっぱり違うのは、きっと実際は『楽しい事ばかりじゃないから楽しい』のであって、その領域はやはり実際に行かなければ味わえない

トラブルを恐れるのではなく、ちゃんと準備して挑む事は楽しみでもあると同時に、乗り越えた時の達成感もより大きいのだろうと思う

行った場所が通過点でもいいし、オレが高知を気に入ったように、自分に合っていると思うなら拠点として再度訪れたっていいわけで、自由なのである

 

オレは初めてバイクの免許を取った時、『これでどこまでも行ける』と思った

初めて自転車に乗れた時は、今まで徒歩圏内だった行動範囲が地図上で大きく丸いサークルで囲うようにいっきに広がり、学区外で禁止された場所であろうが色んな所に冒険に行ったが、今度はその何十倍ものスケールで、本当に翼を手に入れたぐらい衝撃だった

200ccのTWで300km離れた名古屋まで行った時は、さすがに「二度と行かない」と思ったが、バイクを持っている人なら皆、自由な翼は持っている

毎年日本各地で行なわれるバイブズミーティングにはそんな人ばかりが来るが、バイクは日常の『足』だけではなく、どこまでも行ける『翼』でもある事を、この小説を機会に考えてみてもらえればと思う

 

最後に、岡崎で世話になったテッちゃんは、この時からずっと、毎年岡崎に会いに行っている

最低でも年に1度、2泊3日で近くに宿を取り、その期間中は『フリーバード』で呑み続けている

数年前、長野でバイブズミーティングが開催された年に、テッちゃんが参加してTシャツを売りたいというので、出店するオレの知り合いに話をつけて、出店ブースの一角にTシャツだけ置かせてもらった

その時テッちゃんに場所代なんかいらないが、みんなに『しょうゆ焼きそば』を作ってもらえないだろうか?とダメ元で頼んだ

せっかくの休みで申し訳ない事を百も承知で聞いてみたのだが、テッちゃんは心良く引き受けてくれ、ショベルにフライパンを含めた食材を積んでやって来て、夜テントで作ってくれた

みんな大喜びした事は言うまでもないし、外で食べた『しょうゆ焼きそば』はやっぱり格別だった

毎年夏、四国一周の帰りに訪れていた岡崎は、数年前から桜が一面咲き乱れる『桜祭り』が行なわれる3月・4月の時期に行くようになり、今年も今月行ってくる

去年のバイブズミーティング大阪の時にお世話になったゲンさんは、岡崎の近くの春日井という場所に住んでいて、オレが毎年岡崎に行っている話をすると「その時に岡崎まで行くので一緒に呑みましょう!」と言ってくれたので、もしかしたら会えるかも知れない

 

会えれば嬉しいし、『旅』は『縁』も生まれる

旅はやはり、素晴らしいのである

 

*****おわり

(*小説シリーズいかがでしたか? 今週いっぱいぐらいの期間でご意見・ご感想をお待ちします。あなたが感じた・経験した旅を教えて下さい)