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四万十川上流を抜けた小さな町で、あまりの暑さにガソリンスタンドに逃げ込み、バイクを日陰で休ませている間に汗でも絶対に流れ落ちないと書かれた『強力な日焼け止め』を買った

今日の目的地は今治で、すでに泊まる宿も確保していた

今治に決めたのはわけがあって、愛媛県にある今治は四国の角に位置し、今治からは『しまなみ街道』と呼ばれるいくつもの小さい島を結んだ橋が、本州の広島までつながっている

今日今治に泊まり、明日朝イチで本州の広島に上陸して静岡の沼津まで行ければ、沼津に泊まれる

沼津の知り合いたちに会いがてら、旅の報告ができれば今回の締めくくりにピッタリのフィナーレだと計画したのだ

この先、今治を目指すにはどの道を使うのが良いのだろうか…

そう考え、今の休憩のタイミングでガソリンスタンドの店員に道を聞いておく事にした

他のお客さんというか、車すら1台も走っていない閑散としたスタンドでは、店員も話し相手が欲しかったのか嬉しそうにオレが渡した地図を広げる

「あれ? この地図古いッスね」

「へ?」

今回の旅の為に¥7,000も払って購入した日本全土が示されたオレのマップルに、何を言ってくれるのかとオレも耳を疑った

「この地図には載ってないけど、今はこの裏にバイパスができてるんですよ」

 

なんだって? 冷静に考えれば解る事なのだが、地図にも古い・新しいがあるのだ

 

……何の為にここまでこんな大きな地図を積んできたのか……っていうか、古い地図を書店に置くなよ

 

バイパスができていて少しでもショートカットできるのは嬉しいが、ただのガサばる荷物でしかなくなった古い地図を買わされた事実は悲しい

やりきれない思いで休憩を済ませ、先を目指した

 

教えられたバイパスから松山自動車道に入り、今治を目指す

夏の日射しは変わらないままだが、高速を走ってからは風も涼しく、快適さを取り戻していた

坂は多いが車の流れもスムーズで、左には時折海が見え、右手には濃い緑の山々が連なる眺めの良い景色をハーレーが進む

ドカドカドカドカドカドカドカドカ……!

さっきまでの休憩でバイクも喜んでいるようだし、オレの日焼け対策もバッチリである

西予の辺りという事はみかんが有名で、きっと海岸線も綺麗なんだろうな……そう考えると少しもったいなくも思える

「今度はもっと、長い日数でゆっくり来てみたい」何度もそう思った

17時前に松山まで来た

が、しかし、この辺りで一番大きな街である松山の、平日の帰宅ラッシュにカチ合ってしまう

あきらかに今までの中では大きな繁華街で、道幅も狭ければ交通量も多い

どこも帰宅ラッシュは同じなのだと言わんばかりの渋滞に、ドハマりしてしまったのだ

原付や90ccクラスのスクーターは細かく車のワキを抜けて進んで行くが、荷物満載のハーレーでは抜けられないスペースの方が多く、ジワジワと車の流れについていくしかない

非情にまずい……

ここまで高速を走りきって、大渋滞に遭遇した事でエンジンは烈火のように熱を持ち、煮立った釜の上に座っているかのように熱い

油圧はとっくにゼロまで下がり、夏の夕方という気温のピークと、動かず停滞している車の大量の熱で、辺り一帯はサウナのようである

まずい…非情にまずい……

目的地である今治は、この松山を抜けたらすぐなのだ

ここを何とか無事突破したい所だが、このままではバイクがオーバーヒートして壊れてしまう

バイクを一度休ませたいが、ここまで熱をもったバイクを冷ますとなると、その間におそらく夜になってしまうだろう

 

どうしよう…停まるか?

悔しいが、停まるしかなかった

とにかくこのコンディションではバイクが壊れる、それだけは確かなのだ

大きなガソリンスタンドを見つけ、逃げ込むように入った

 

オレ1人に3人ぐらいで飛び出してきた店員たちは、みんな若い年齢の男の子でオレのバイクに興味津々のようだ

給油を終わらせてバイクを休ませたい事を相談すると、心よく了承してくれた

「参ったな、しかし……」

思わぬ足止めが悔しい限りだが、どうする事もできない

時刻は17時半近く、夕方真っ只中である

ここまで熱を持ってしまったバイクを、今から冷ますとなるとどれくらいかかるのだろうか……

今の気温で考えれば、相当時間がかかりそうだ

「やれやれ……」

それでも、冷まさなければならない

 

他の車が入ってきた時に邪魔にならないようにと、スタンドの隅まで押して行く途中、車の整備を行なうピットの中の機材に目が止まった

 

それは、業務用の巨大扇風機だった

 

つづく*****