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目的だった沈下橋を無事写真に収め、大満足で先を目指した

今日の宿泊予定地は今治で、まだまだ先である

「さぁ、頑張って先を目指すぞ」

更に四万十川の上流へと向かうが、上を目指すにつれ、道幅がどんどん狭くなってきていた

ここに来るまでも決して充分な広さの道路とはいえなかったが、片側一車線のきちんと整備された道路は、川側にはガードレールもあれば小さい路肩もあった

しかし、先に進むにつれ要所要所工事が行なわれて片側のみ交代で通行する道路が増え、更に先へ進むと工事の係員すらいない、『対向車に注意して勝手に渡れや』とでもいうような、車1台しか通れない狭い道路になっていた

何度も道を確かめたが、国道なのか県道なのか、数字の入った標識は明らかにこの辺りでは一番広い道路のはずである

それでも1車線のみで対向車に注意しなければ通れない、でもガードレールもない狭い道沿いに民家が並んでたりもしていて、「この道でホントに正しいのか?」と何度も疑った

地図を見ても道路自体が少ないので他に間違えようがないし、注意して進むしかない

かろうじてアスファルトは敷いてあるので林道ではないぐらいの道を、慎重に進む

対向車も含め他の車自体少ないのがせめても救いではあったが、先で最大の難関を迎える

そこは四万十川源流付近だと思われる、車が1台しか通れない道幅で、山側は落石防止壁で固められた岩肌が、ウネウネと何重にもS字状に続き、先の状況、対向車が来るのかが見えない場所だった

落石防止壁の反対側は四万十川源流の崖になっており、ガードレールもない

そこへ自分が今まで通ってきた工事現場へ向かうであろうダンプカーが、対向車として時折現れるわけで、普通乗用車でもすれ違う事は不可能、お互いがある程度の場所で停まって譲り合うような場所だった

停まるにもオレが停まるとすれば左側の崖側になるわけで、荷物満載のハーレーでハンドシフト、左足がつけない状況は沈下橋どころではないスリルである

向こうからダンプなんて来たら間違いなくジ・エンドで、まるで誰かが作ったゲームに自分が登場しているかのような気分だった

続くS字コーナーに立つオレンジのミラーに、対向車が写らない事を何度も確認し、進んでは一度停まってタイミングを測り直す事を繰り返し、何回かに分けて走り抜けた

こんな道、いつまで続くんだろう…っていうか、これ以上狭くなったらどうしよう……

生きた心地がしなかったが、そこが一番のピークで、山の反対側へ越えたとでもいおうか、ここからは少しずつ道幅も戻っていった

 

道幅が広くなるという事は、日射しを受ける事でもある

今までは道が狭い分、たくさんの木が緑のトンネルとなって日射しを遮ってくれていたのだが、実際は随分と気温が高い事に気づいた

夏の日射しがギラギラと降り注ぎ、走っているので風を受けている分だけ耐えられてはいるものの、それでもジワジワと体力を奪っていく

ちょうどこの年、『日本で一番暑い街』として『暑いぞ四万十市』を掲げたこの場所は、この日が最高気温でこそなかったが、それでも35c〜36cにまでなっていた

「少しバイクを休ませたいな……」

渋滞なんて一度も遭っていないのに、バイクの油圧はだいぶ前からゼロまで下がったままだ

空冷という、風の原理でエンジンの熱を冷却させるシステムは辛い

熱風しかこないこの状況は、ドライヤーの風を受け続けているようなもので、これではガソリンで燃え続けるエンジンが、冷めるはずもない

高温多湿の日本は、やはりハーレーのような大排気量の空冷バイクは向かないのだ

景色が少しずつ変わり、やっと小さな街らしき建物が見え始めると、ガソリンスタンドを見つけた

「ちょうどよかった、少し休もう……」

給油を済ませると、休ませてもらう許可をもらい、日陰にバイクを移動する

オレも水分を補給しようと500mlのスポーツドリンクをほとんどイッキ飲みで空にした

「参ったな……こりゃこの先も相当シンドイぞ……」

時刻は13時を過ぎ、いよいよ陽射しも強くなってきた

雨はもちろん嫌だが、かといってオーブンに飛び込んだようなこの暑さも地獄だし、その過酷さはこれから先も増すだろう

それと同時に心配になったのが日焼けで、身体はともかくとしても、半キャップにサングラス姿でこの状況を走り続ければ、間違いなくパンダの出来上がりである

きっとヘルメットのアゴヒモも日焼けの痕がくっきり残り、東京に戻ってからとんでもなく不便な生活を送る事になる

「そうだ……日焼け止めを買おう」

幸い、ガソリンスタンドの反対側にコンビニを見つけた

昔、UTCでは皆が夢中になって海で遊び、ガンガンに日焼けしていたが、エイプバーという自分の頭の位置までせり上がったハンドルに改造していたロナウドが、日焼けで肩が痛くて腕が上がらないと言い出し、ダニエルとバイクを交代して帰った事がある

その時はずいぶん馬鹿にしてからかったものだが、まさか自分がその心配をする事になるとは思わなかった

セミも「暑い、暑い」と言っているのかと思うぐらい、人を見かけないし車もない、田んぼとセミしか居ない道路を渡り、コンビニへ向かう

あたり前だが店員がいる事にホッとして、冷房の涼しさに生き返った

季節的にも日焼け止めは充分な種類が並べられていたが、その中でもどれが良いのかまでは解らない

男のオレには当然ながら今まで日焼け止めを買う習慣なんかなく、人生初の日焼け止めデビューという事になる

そして男だからか『強力』という謳い文句に惹かれ、『汗でも絶対に流れ落ちません』という次の肩書きに、「スゲエな、コレ」と即採用の判断を下した

 

そしてまた、この日焼け止めこそが、後にオレを最大限に苦しめる事になるのである

 

つづく*****