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真っ白い砂浜が続く海岸線を走っていると『ビオスおおがた』という道の駅を見つけた

休憩に寄り、缶コーヒを呑みながらタバコを吸っていると、動画に収める為のデジカメを使ってない事を思い出した

「やべぇ、せっかく持ってきたのに……」

『行き』の工程ではことごとく雨に泣かされ、とてもそんな状況ではなかったのですっかり忘れていたが、まさにこういったロケーションを収めたくて持ってきたのだ

デジカメを固定する為に自作した、クリーニング屋の針金ハンガーをバイクのハンドルにセットし、デジカメを固定する

「バッチリじゃん♡」

その出来映えに改めて納得し、自分の発見に自画自賛して先を目指した

 

が、しかし、長かった海岸線はここまでで一旦お休み、ここからは山の景色になるようで、目的地である四万十川に出てしまった

これから先は山を登り、四万十川の上流を目指す

お目当てである四万十川特有の、手すりがない橋『沈下橋』はどの辺りだろうか

辿り着いた四万十川は河口に位置している為に川幅もかなり広く、対岸まではそんなレベルの橋では収りそうもない距離である

このまま上流を目指し、川幅も狭くなってくればきっと出てくるだろう

そう判断して川沿いの道を進んだ

海岸線も格別だったが、山は山の良さもあり、こちらも渋滞なんてなければ急なコーナーなんかもない

きっと走り屋のライダーなら物足りないであろう緩やかな道を、ドカドカドカドカとハーレーが進む

セミが鳴き続ける中、木洩れ陽が射す緑のトンネルをいくつも越え「これはこれでイイもんだな……」と、また一つ四国の魅力に感動していた

 

時折緑が途切れたすき間から見える四万十川の、川幅がずいぶん狭くなってきている事に気づいた頃に、ポツンと小さな橋が視界に入った

沈下橋だ

人が1人やっと通れるぐらいの幅しかない小さな沈下橋は、セミが鳴く清流四万十川の上にひっそりと架けられ、まるでお寺の灯籠ように静かでありながらズッシリと、とても趣があった

停まってゆっくり眺めたかったが、バイクを端に停めるほどのスペースがなく、ここでは先に進む

昨日全部で50カ所近くもあるという話を聞いていたし、先の何処かでちゃんとバイクを停めれるスペースがある沈下橋もあるだろう

そう思って走っていると、言われた通り色んな沈下橋が出てきた

人1人通るのがやっとの極細沈下橋は、手すりが無いだけに実際渡ったら怖そうだと思ったし、そうかと思えばちょっとの雨ですぐ水没してしまいそうなローダウン系の沈下橋もあった

共通するのはどれもが絵はがきのワンショットに使えそうな風景ばかりで、それはきっと年月からなる歴史を現す風情からなのだろう

ここでも自分の日常からは考えれられない世界がある事を知り、「『日本』ってやっぱスゴイな……」そんな事を思ったりもした

そしてついに、ひときわ大きい沈下橋を見つけた

長さも今までの沈下橋に比べてはるかに長い橋なのに加え、軽トラックが1台ギリギリで通っている様子を見ても、明らかに今までの沈下橋より大きいし、それは下まで降りれる事も意味していた

降りる場所を探して休憩しよう!

そう決めて緩やかな下りが続く砂利道を発見し、バイクで慎重に降りる

対岸まで続く沈下橋は60〜70メートルはあろうかという長さで、対岸には小さな町もあるようだ

「沈下橋の中心にバイクを停めて、四万十川と収まるアングルで写真が撮りたいな……」

そう思い立って、方法を考えた

軽トラックが通った所を見たが、それでもギリギリで、橋の上でハチ合わせるのは絶対NGだ

すれ違う事ができない幅で、しかも手すりがない沈下橋の上でなんてバックで下がるしかない

それを荷物を積んだハーレーで、橋の中心からバックで戻るなんて考えるだけでも恐ろしい

思いついた方法として、とりあえず一度対岸まで渡り、向こう岸でUターンをする

戻ってくればそのまま元の道路に戻れるコースを確保し、橋を渡る途中で一旦バイクを停めて、自分だけがダッシュで橋の入り口付近まで戻って写真に収め、急いでバイクに戻ってそのまま走り去ろうという計画を立てた

まずは対岸まで沈下橋を渡る

人生初体験だったが、左右の手すりが無い橋を渡るというのはとんでもないスリルで、当然ながら左右5メートルぐらい下は川である

ゆっくり走っても怖い、スピードを出しても怖い、教習所の究極の空中一本橋とでもいうような状況を慎重に渡った

対岸まで渡ってUターンを済ませ、バイクを橋の中心まで走らせる為の用意をする

最悪後方から車が来てしまったら、平謝りして待ってもらうしかないと思ったが、前方から対向車とハチ合わせる事だけは何としても避けなければならない

五感を研ぎすませて目と耳で車が来ない事を確認し「今だ!」と、渡ってきた沈下橋を戻る

橋の中央部分でバイクを停めるが、エンジンは切らないままバイクから降りた

エンジンを切ってしまっては、いざ対向車が来た時にキックなど踏んでいるヒマはない

大慌てでダッシュで戻り、デジカメを出す

「ここだ」と思うアングルでシャッターを押すが、まさかの『空き容量が不足しています』のエラー表示に卒倒しそうになる

何故このタイミングで!!

沈下橋の真ん中で、タッタカ、タッタカとハーレーのアイドリングが心細そうに響き渡り、ますます焦りながらいらない写真を削除してデジカメの容量を復活させ、なんとか数枚取る事に成功した

撮った写真を慌ただしく確認し、ダッシュでバイクまで戻ると、逃げるように沈下橋を後にするのであった……

 

つづく*****