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四国一周三日目、高知では二日目の朝を迎えた

この日もカツオを食い貯めしておこうと思い、ここまで積んできた地図を持ってひろめ市場に向かった

「しかしホント美味いな……」カツオをツマミにビールを呑みながら、ここに来るまでの道を振り返ってこんなに走ったんだと驚き、明日からはどのルートを走って先を目指すかを考えていた

トイレに行った帰りにインフォメーションのコーナーに置かれたガイドブックのチラシをいくつか頂戴し、呑みながら読んでいるうちに一つの写真に目が止まる

それは四万十川に架かる橋の風景で、橋なのに手すりが一切ない変わった形状の橋は、確かに何回もTVで観た事のある、高知では有名な風景だった

 

「明日、ここを観て先へ行こうかな……」

そんな事を考えて地図を広げてはみるが、この橋が四万十川のどこに架かっている橋なのかまでは解らない

四万十川はたしかに有名な川だが、そこに架かっている橋となると、川のどの辺りを目指せばいいのだろうか?

これは聞いた方が早いなと思い、ビールのお替わりを注文がてら店員に聞いてみる事にした

「すいません、この橋を観に行きたいのですが」

「……そんな橋、いっぱいあるよ」

店員に半分呆れたように言われた

 

橋は『沈下橋』と言い、200km近くある長い四万十川で、50カ所近くもあるという

橋に手すりが無いのは大きなダムがない四万十川特有の構造で、雨で川が増水しても流された流木などが橋に引っかかる事を防ぎ、増水した抵抗によって橋が流されるのを防いでいるらしい

 

教えてくれた店員は今でも居るし、オレは覚えているが向こうは覚えてないようなので、今はもう接触していない

多分自分で調べれば解っただろうが「聞いた方が早い」で聞くと、相手にとっては常識知らずな事を聞いてしまい、恥をかく事もある

「そんな橋、上流目指して上っていけば腐る程あるよ」

半分相手にされないような対応を受けたが、「へ〜…そうだったんだ」と素直に感心し、明日からの目的地が決まった

 

翌日、晴天の中で高知を発った

ここまで雨が続いたが、高知に着いてからは雨に降られる事もなく、すっかり夏の陽射しが戻っていた

今日は四万十川の上流を目指し、愛媛県の今治までが目標である

来る時に降りた高知ICから乗り、先へ進む

ここも片側一車線の細い高速道路ではあるものの、車どおりも少ないため渋滞もなく、たくさんのユリの花が咲いていてとても綺麗だった

高速の終わりまで走りきり、国道か県道なのか、大きな数字の標識が示された道を進む

海岸線に出ると海が広がり、とんでもなく素晴らしい景色が迎えてくれた

まったく渋滞なんかないこの辺りは、前に車が1台も走っていない、ミラーで後ろを見ても1台も車がないなんて場所がいくつもあり、左側通行の日本で時計回りに四国を周る、すなわち、延々と海岸線沿いを走るそのコースは、ゆるいカーブもほどよくあって、まるで車のCMのようだ

そして東京から来たオレには理解できない事だったが、真っ白い砂浜が延々と続いている場所でも、海水浴をしている人がいない

8月のお盆を過ぎた時期だし、まだまだシーズン真っ盛りで、子供たちも夏休み中のはずなのに

やはり地元の人には珍しくもないからなのだろうか?

視界いっぱいに広がる海が、ケタ外れに綺麗なロケーションであるのにも関わらず、せいぜいサーファーを数人見た程度で、海水浴をしているような家族連れは見なかった

そしてまたそれが、日常ではあり得ない非現実的な感動を呼び、走りながら何度も「いい所だなぁ……」と思った

オレはバイク乗りでも首までガッチリ革ツナギを着込んで走るライダーでもなければ、革ベストに革のチャップスで装備を固めるハーレー乗りでもない

古着のアロハに、古着のジーンズとスニーカーといった、そのまま電車にも乗れそうなぐらいラフな格好で、同じ歳の旧いハーレーでゆるく走るのが好きだ

水平線が広がる海を眺めながら、夏の空の下を荷物を積んだ真っ赤なハーレーが進む

ドカドカドカドカドカドカドカドカ・・・・・・

4速のショベルを3速で、それでもまだ少し余っているぐらいのスピードが、マフラーからの排気音も聴こえて心地いい

ドカドカドカドカドカドカドカドカ・・・・・・

信号も無ければ他の車もいない、在るのは目の前の道と真っ青な空、真っ青な海

そうだ…この感じが大好きだ

「最高だな……」

ドカドカドカドカドカドカドカドカ・・・・・・

このまま海を眺めながら、ずっと海岸線を走り続けたいと思った

つづく*****