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「いたたたた……」

部屋が並ぶ長いホテルの廊下で、1時間みっちり正座させれて部屋に戻った頃にはすっかり夕方だった

自分たちがしでかした事よりも、『あの場に英語の先生が居た事がついていなかった』とボヤいていると、正座していたオレたちをからかっていた友人が冷やかしに入ってきた

「なんか1階ロビーの先に大きい岩風呂があって、秋田県から来た共学の高校の女子が入ってるらしいゼ♡」

「マジ?」

「脱衣所とか覗けないのかな」

「行ってみようゼ」

全く反省もなく次の行動に移る理由の大半は、「止めようぜ」と言い出して同学年の友人たちに『ビビってる』と思われる事で、そんなつまらない意地の為に再びみんなで1階の岩風呂に繰り出した

 

実際は『女湯』の暖簾が下がる脱衣所の、曇りガラスの扉を「開けて♡」とフザけて数回叩いただけで、曇りガラスだったので誰かは居たが、誰かも解らないし何も観てはいない

それでも騒ぎが大きくなってしまったのは、相手の高校の女子生徒が先生に泣きつき、先生がホテルに通報し、ホテルから自分の学校に注意が来てしまったからだった

言うまでもなくこっぴどく怒られたオレたちは、とうとう翌日に一泊二日で帰される事になった

 

学校から自宅に連絡がいき、翌日保護者が東京駅まで迎えに来るようにと告げられたオフクロは泣いたらしい

ちょっと納得できなかったのは『覗き』は犯罪だけど覗いてないわけで、そこは最初から悪フザケだった事は事実として伝えたいと思い、自分からも自宅に電話して説明した

怒られるのは当然だが、泣くほど悲しませるような犯罪をしたという学校からの報告は少し違うと弁明し、親が迎えに来るほどでもないと断った

オフクロは納得したが、ただ保護者が来るようにと言われていると言い返され、普通自動車免許を取ったばかりで車に乗りたくて仕方のない兄が「だったらオレが行く」と言い出してなんとかまとまった

もう一件連絡しなければならないのは行きに東京駅まで見送りに来てくれた彼女で、「すぐ帰って来るからよ」なんて言っておきながらホントに翌日帰る事になってしまった

普通に三泊四日を過ごした最終日、また東京駅まで迎えに来ると言っていたが、それも断らなければならないし、その理由も話さなければならない

「友だちと女風呂を覗きに行って…」なんて言ったら、何て言われるのだろうか

オフクロに連絡するよりもよっぽど気が重かったが、電話して事情を話し、やっぱりここでも泣かれて「何やってんの」と怒られた

 

翌日の早朝、文字通りトンボ帰りで東京に戻る事になったオレたちは、ホテルの前に集められた

他の生徒は今日からはバスに乗り、広島・倉敷を観光するらしい

当時完成して間もない瀬戸大橋を渡るとの事だが、先生のご好意でオレたちも電車でなら連れて行ってやるという

当時はもちろん知らなかったが、本州と四国を結ぶ瀬戸大橋は、高速と重なって鉄道も通っており、他の生徒はバスで、オレたちは自分の荷物を持って電車で渡り、最初の駅でUターンして戻ってくるというわけだ

「どうせ帰らなきゃいけないなら面倒くさいからサッサと帰りたい」なんて最初は思っていたが、左右が全面瀬戸内海で、渡った先が四国という壮大なロケーションにはただただ驚いたし、橋を渡る電車に乗りながら「よくもまぁ、こんな橋を作ったものだ」と感動した

 

それ以外に大した記憶はない

苦労して重たい思いをして持って行ったものの、何の役にも立たなかったエンジニアブーツや、免許取り立てで迎えにきた兄の車に乗って酔った事よりも、瀬戸大橋から眺めた瀬戸内海と四国を観て、「いつかもう一度来てみたいな」と思った

長く忘れていた記憶だったが、それからハーレーに乗る事になって、北海道よりも小さい四国なら、10日ぐらいあれば一周できるのでは?と思った

そうだ、左側通行の日本は、時計回りに走れば延々と海を眺めながら四国を一周できるかも知れない

夏休みにもピッタリに思える、素晴らしいアイデアに思えた

 

オレの人生最初のひとり旅の目的地は、こうして『四国一周』へと決まった

 

そうだ、四国へ行こう……

 

次回いよいよ本編へ!*****(評判が悪ければここまでで終わり、通常のブログに戻ります:笑)