ロナウドと来たバイブズの独立記念キャンプもいよいよ夜になって本格的に冷えはじめ、持ってきた装備で最大限の防寒に備えた

ここまで穴だらけの計画だったロナウドだが、実はヨメにウエストライドのダウンを持たされてきたという

写真はオレのウエストライドのダウンだけれど、なるほどアレは確かに暖かい

「ここまで必要と思わなかったけど持ってきて良かった」と、ヨメに感謝しながら早々に着込むロナウドを見て「だったらバーバリーのダウンいらないじゃん…」と思いながら、オレはバイブズ本部に挨拶に行く事にした

自宅から持ってきた焼酎を入れたスキットルを片手に「前日も仕事で遅くなって、まだ眠たいから早めに寝る」と言うロナウドを残し、編集部の方たちのいるテントに行った

さすが本部のテントだけあって一斗缶に焚き火をしていてまぁ暖かい

それでも夜になればなるほど寒くなり、みんなで「寒い、寒い」といいながら「(冷えるだろうとは思っていたけど)こんなに寒いとは…」と驚き半分&ボヤキ半分で一緒に呑んだ

ウメさんやブル、アライさんやヘッタさん、伊勢さんたちと盛り上がり、時刻は既に夜12時を越えて真夜中に…寒いからかいつものミーティングに比べて早めに寝る人も多いみたいで、辺りは真っ暗で静かで、オレも明日また走るしそろそろ寝るかと思い、皆にお礼を言って先に寝る事にして本部のテントを出た

周りに何もない真夜中の牧草地は本当に真っ暗で、自分のテントはどこだったろうか…とロナウドが寝ているであろう自分たちのテントがある方角を独りで探していると、1人用のテントのセンターポールの中心辺りに、ヘルメットがかけてある…

誰のか知らないけれど、中心の空間に丸いヘルメットが浮かんでいて、まるでヒトの頭みたい

ちょうど、1人用テントの目の前に、人が座ってコッチを見ている様な不思議なアングルで、皆が寝静まって真っ暗な闇の中、幻覚みたいな光景に「疲れたのかな…」なんて思いながら、「それにしてもまるで人みたいだな…」なんて思いつつ、すぐ近くを通って自分のテントに行こうとすると、なんとそれはヘルメットではなく、寒さで眠れない為にイスに座って震え続ける1人のバイカーだった……

頭にバンダナをスッポリかぶって、寒いからか口の周りはマスクで覆ったその人は、メガネをかけた目しか出ていない状態で、最初は人だと解らずに二度見どころか三度見、四度見ぐらいしてホントに人だと解った時には、それまでの酔いなどイッキに吹っ飛ぶぐらい驚いた

コッチも1人でまったく面識はないけれど、さすがに「どうしたんですか?大丈夫ですか?」と声をかけると、寒さでテントの中で横になると、両足が吊ってしまって痛くて眠れないのだと言う

横になれないので持ってきた寝袋を腰に巻いて、キャンピングチェアに座って朝になるを待っているらしい

「そうですか、それは大変ですね。じゃあ、頑張って」なんて言えるはずもなく、これからまだまだ冷えるし、一緒に本部のテントに行こう、そこは皆いるし、焚き火もあるから温かいと話す

すると真っ暗の闇の中で座って目しか解らないそのバイカーが「ボクはスタッフじゃないからそこに行く資格がない人間です」と言い出した

「それは確かにそうかも知れないですね。じゃあ、頑張って」なんて言えるはずもなく、いやいや何を言ってるんだと説得する

そんな場合じゃないし、皆そんなこと気にしないはずだと

そもそもオレだってスタッフじゃないけど今まで居たし、みんな優しいから大丈夫だとなだめる

しかしこのバイカー、頑なに拒否を続けて動こうとしない

このバイカーの何がそうさせるのか知らないが、オレにしてみれば自殺志願者である

パトロール中の警察官か、夜回りの教師の様にその人の目線までしゃがみ込み、安心させる為の自己紹介から始めて延々説得を繰り返す

聞けば名前はシゲさん(「オレもシゲっす!」と、他人じゃない感を出したつもりだったが反応は冷ややかだった)で歳は58歳、千葉の木更津ちょい手前から1人で参加してきたショベル乗りで、途中電装系のトラブルに遭って10時間近くかかって何とか辿り着いたのだと言う

バイブズミーティングにもVラリーにも参加してきていて、今回もこの独立記念キャンプにどうしても来たかったのだそうだ

「なるほどそうだったんですか。それは大変でしたね」なんて話しは本部のテントの焚き火の前でゆっくり話せばいい事であって、このまま付き合っていてはオレまで心中するハメになり、別の記念日になってしまう

このまま話しに付き合っててもラチがあかないので、結局最後はシゲさんが腰に巻いている寝袋を奪い、手をつないで無理矢理本部に連れて行った

「先に寝る」と出て行ったオレが、全身革づくめの黒い大男と手をつないで戻ってきた事に最初はみんな驚いていたが、そこはさすがバイブズスタッフで暖かく迎えてくれ、一番火の当たる特等席に座らせて温まらせてくれた

オレはというと「じゃあ後はよろしくお願いします」とも言えず、シゲさんの保護者として(オレのが全然年下だけど)もう一度付き合った

結局「先に寝ます」といってバイブズのウメさん達が焚き火を好きに使ってくれていいし、このままこの本部に居てくれていいと言ってくれたご好意に甘え、オレたちと一緒に付き合ってくれたムーさんが「そろそろお開きにしませんか?」と言ってくれたのは朝の4時過ぎだった

自分のテントにだいぶ遅れて戻った時には寒さのドピークで、メチャクチャ寒かったが次の日の(もう当日だが)為に早く体力を復活させなければと早く寝る事しか浮かばないぐらい眠かったし、とても冷水を浴びて歯を磨いたり顔を洗ったりする気分になれなくて、早々に寝袋にこもって寝る事にした

しかしその頃、向いのテントではロナウドも同じ様に寒さで眠れず、バーバーリーのダウンは無理矢理ズボンとして下に履き、その上からゴミ袋をかぶって寝袋に入り、必死に生きようとしていたのだった

(つづく)